店舗レイアウトを考えよう
厨房内の基本レイアウト
飲食店で、サービスの主役となる料理を作るのが厨房です。その重要な厨房のレイアウトは、料理の出来栄えと出来上がるまでの時間に大きく影響します。使いにくい厨房は従業員だけでなく、結果的にお客様にも大きなストレスを与えてしまうのです。
厨房の基本的なレイアウトは、従業員ができるだけ厨房内を行き来することがなく、最小限の体の動きで調理の一連の流れがこなせることが理想です。食材を出し、調理台で加工、下ごしらえをする、加熱調理して盛り付ける、完成品を配膳係に渡す。これらがベルトコンベアのように一連の流れの中でこなせれば、狭い厨房内を動き回る必要がないので、料理を出すまでの時間を短縮できます。これが冷蔵庫、調理台、ガス台、洗い場、食器置き場、カウンターなどを、作業手順と人の動きを考えずに配置すると、大変に混乱します。
つまり、「動線」が交錯したり無駄に往復したりするので、作業効率は上がりません。しかも人と人がぶつかったり、はずみで物を落としたりなど、けがや物品損傷のリスクも高くなってしまいます。ですから、作業台の近くに冷蔵庫を置いて上半身の動きだけで食材の出し入れと調理作業が連続でできるようにするとか、食器洗いのシンクと食洗機、水切り用の置き場は横並びにするなどという、スムーズな動線を考える必要があるのです。
ただし、レイアウトの「正解」は、厨房の広さや設備の規模、人の数などによって違うので、それぞれの状況によって最適な配置を組みましょう。
お客様と従業員の動きを考える
まずはお客様に来店してもらわないと始まりませんから、お客様を店内に呼び込むための店構えを考えます。お客様をスムーズに呼び込むためには、まず入り口を開放感ある作りにしましょう。会員制のお店でもない限り、外から見て自然と中をのぞきたくなるような、中の見える入り口にします。窓側の席も設けると良いでしょう。
また、入り口に通行の妨げになるものを置いたり、視線を遮るものを置いたりするのは控えましょう。扉を開けて中に入ると、店内を見渡せるようにしておくといいでしょう。中が見えないと、人はどうしても不安を抱くものです。
ただし、すでに入店しているお客様のことも考えなくてはいけません。外から中の様子が見えるということは、店内にいる人は外から見られるということです。ガラス越しや入り口付近からの他人の視線で、客席にいる人が不快に感じないような配慮が必要です。窓の視線部分にカーテンやスクリーンなどで目隠しをしたり、店内に観葉植物を置いたりという工夫でも対処できますね。
お客様にとって居心地がよく、従業員にとって動きやすい店にするためには、お客様の動線と従業員の動線を意識的に分ける必要があります。お客様の動線はある程度決まっており、基本的に入り口と客席の一往復になります。これに客席とお手洗いとの動線を加えればほぼすべてです。入口から店内が見渡せれば、案内された客席に問題なく向かえます。あとは席間の通路幅が狭すぎないようにして、直線距離は近いのに遠回りしなければたどり着かないような箇所ができないようにレイアウトしましょう。
一方、従業員は店内のあちこちを行き来します。厨房に行ったり、客席に行ったり、レジに行ったり、時には店の外に行くこともあるでしょう。両手に料理を持って店内を動き回ることもあるので、その面でも通路は広めに取っておくべきです。店内では、お客様優先が前提なので、配膳中の従業員がお客様とすれ違わなければならないときでも、脇によけて道を譲れるくらいの通路幅は確保したいものです。お客様に「狭いな」と感じさせずに、接客姿勢が礼儀正しいという印象を持ってもらえます。また、お客様とぶつかることで、その拍子に衣服を汚してしまうなどのリスクを防ぐことにもつながります。
衛生面・防災面でのレイアウト必須項目
飲食店を運営するときには、保健所(衛生面)そして消防署(防災面)の検査を通過しなければいけません。店舗レイアウトについても、クリアすべき検査項目があります。
【衛生面での必須項目】
保健所の検査は、衛生面での安全性が確保されているかをチェックします。レイアウトに関連した項目を挙げると、厨房(調理場)とホール(飲食する客席場所)は、仕切りにより明確に区別されていること、お手洗いはお客様用と従業員用が別々に必要であること、従業員用の更衣室などがあること、シンクが2槽あることなどがあります。
これらが実践されていないと、保健所からの営業許可は下りません。もちろんこの他にも、設備の仕様などの検査項目もたくさんあるので、漏れがないように注意しましょう。
【防災面での必須項目】
お客様と従業員、多くの人が集まる事業所・店舗では、万が一の災害時に対する備えが必須です。これらは消防法で細かく定められています。
店舗レイアウトに関する内容とすれば、避難口と避難経路が確保されていることが挙げられます。外に逃げ出せる避難口と、そこにたどり着くまでの道筋が十分な形であることが必要なので、通路があっても何か物品などで通りにくくなっている状態は不可です。
避難器具の有無やその他設備などの必要性は、店舗規模、所在階など、その店の置かれた状況によって異なります。自身の店舗はどのようにしなければならないのかを事前に把握して、確実にレイアウトに反映しましょう。
また、消防法上の内装制限もとても重要です。建築材は法令基準をクリアした製品の使用が必須ですし、カーテンやじゅうたんといった追加で設置する物品についても、消防法に基づいた試験に合格した防災性能を有するものでなければなりません。こうした防災面での規制をクリアしなければ、店舗をオープンすることはできませんので、しっかりチェックしておきましょう。
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